昨日のブログで、障がい者支援に関する新たな制度『就労選択支援』をご紹介させていただきました。
その際には、新たな(障がい者支援の)取り組みが始まる以上は、関係する方々が意識を変えてゆくことが求められる と述べさせていただきました。
で…その意識を変えるべき(関係する)方々を「ご本人」ならびに「施設スタッフなどの周囲の人」としたところですが、その後 かかる〝意識を変えなければならない人〟の範疇(はんちゅう)に「障がい者さんの親」を追加させていただきたいと思うところです。
基本的に本人の意向と意欲を基に いわば働き方を選択する『就労選択支援』は、そのことによって本人の社会環境も(ときに大きく)変わることになります。
そこには、(さきのブログで述べたように)周囲の手厚いサポートと同時に、もう一人の当事者の いわば決意と覚悟が要されると思うのです。
そして、その〝もう一人の当事者〟とは 何いう「障がい者ご本人の親御さん」です。
(これから先は、敢えて批判を恐れずに述懐いたしますが、もし気分を害される方が居られるなら 先にお詫び申し上げるところです)
就労選択に臨む障がい者さん、そこには「これをやりたい」との〝チャレンジ精神〟があり、それは(やや大げさに言えば)いわば自ら選んだ未知の領域へ足を踏み入れる「第一歩」となることでしょう。
その〝勇気ある第一歩〟には(これまで述べているように)『就労選択支援』の基本ルールに基づき、施設スタッフなどの手厚いサポートが伴いますが、ある意味 その対極には〝障がい者さん本人の忍耐と努力〟も求められてくると思うのです。
「これをやりたい」とチャレンジしたものの、当然ながら最初は上手くゆくハズもありません。
で、そのときに要される点を2つ。
1つは、周囲のサポートです。やり始めに上手くゆかないからといって、叱ったりせずに「もうちょっと頑張ってみよう」などと励ましたり指導方法を自ら研究したりして(役務に)慣れさせる努力を、周囲が粘り強く行なうこと。
2つ目は、本人の努力です。やり始めに上手くゆかないからといって「できない!」とスグにさじを投げたり諦(あきら)めたりせず「もう一回やってみよう」と再チャレンジする努力を重ねれば、そのうちにできるようになることでしょう。
そして、何いう この2つのポイントを下支えするのが「親御さんの意識」ではないかと思います。
親御さんは、当事者さんと施設スタッフとの いわば緩衝材となり、当事者がスグに諦めないように本人を励ましつつ、しかし本人にとって無理な役務(就労)にならないよう 施設スタッフのアアセスメント(適切対応)を担保する〝調整役〟を担うことが求められると思います。
ところが、中には まだ(新たな役務が)始まったばかりなのに、本人の言い分を丸呑みにして「イヤなら辞めなさい」とか「家に帰っておいで」などと いわば〝甘やかし〟を当然の如くに行なってしまったら…これでは「アレは嫌だ、これも嫌だ」との〝ワガママの積み重ね〟となり、いつまで経っても定着できないことになってしまうのではないでしょうか。
やはりそこには、本人の心情を理解したうえで励まし続け、施設スタッフとの適切に仲立ちにもなって定着を実現させる、親御さんでしかできない役割があると強く思うところです。
今、障がい者さんの親御さんは、朝、自分の子供を施設に送り届けた時点で〝完結〟してしまい、施設内で(子供が)どんなことをし、どのような扱いを受けているかには関知しない傾向があると聞き及んでいます。
そこには「障がいのある子供を預かってもらっている」との〝負い目〟があるので「後はヨロシクお願いします」と、いわば〝丸投げ〟してしまっているのかもしれません。
しかし『就労選択支援』が始まるこれからは、イイ意味で施設内での子供の行動や意向に積極的に関与し、いわばアスリートのマネージャーのような存在となって 自分の子供が臨む役務の定着を助ける役割が生じてくると思うのです。
そのためには、これまで常態化していたかもしれない「甘やかし」から脱却し、かといって厳しくしろとは申しませんが(述べたように)励まし元気づけながら定着(ひいては自立)を促すような〝親御さんの意識改革〟が求められてくるのではないか、と。
・・・・・。
実は私 とある場面で、障がいを抱える子供さんの「手ひどいワガママ状態」と、それを許す親御さんや周囲の方々の状況を目にし、何ともいえず 考えさせられたものでした。
親御さん(Aさん)は、ある会議に 軽度の障がいを有する子供(成人男子/Bくん)を連れてきたのですが、会議中にも関わらずBくんは「(発言者の)おばさん、なに言ってんだ。」とか「あ~もう疲れた。」などと大声でヤジを飛ばし 周囲を困惑させていました。でも、親御さんはじめ Bくんと顔見知りの参加者は、窘(たしな)めることなく(Bくんが)言うままに任せています。
やがて皆で昼食(お弁当)を摂る段になったとき、件(くだん)のBくん「こんなもの食えるか!」と大声を出し、ややもするとお弁当を箱ごと床に投げ捨てる勢いに…これには親御さん初め周囲の人も慌てて Bくんの前のお弁当を取り上げ事(こと)無きを得たのでしたが…。
これを見た私は「もしかしたら Bくんは、生まれてから今まで〝ワガママし放題〟で育てられているんじゃないか」と思わされたものでした。
確かに、望まぬ障がいを抱えて生まれてきたBくんは、一見的には気の毒に映るものです。そして、そんなBくんの母親であるAさんは「そんな身体に産んでしまってゴメンね…」との、Bくんへの負い目を抱えながら今に至っており、それが「ワガママの容認」につながっているのかもしれません。
しかし これからの人生、Bくんはいずれ独りになってしまうのです。
「障がい者世帯の80-50問題」というのがあります。
これは、親御さんは、たとえ80歳になったとしても 50歳になった子供を扶養し続けなければならないという現実問題です。
親御さんの中には「この子が死ぬまで私も死ねない」と笑えない冗談を飛ばす方もおられるそうですが、実際には(途中で何か起きない限り)親御さんは子供さんより先に旅立つものでありましょう。
そのときに〝ワガママ容認〟を含めた「親の庇護」を受けて暮らしてきた(障がいを抱える)子供は、たちどころに路頭に迷うことになってしまうのです。
で、そうならないようにするための新たな手立てが『就労選択支援』であり、その新制度が成果をもたらすためには、国(厚労省)を初めとする行政サイドの努力・障がい者さんを支援する施設関係者の努力・そこに加えて、ご本人と親御さんの〝意識改革〟が求められるのではないかと強く思うところです。
前日から述べているように『就労選択支援』は、一朝一夕には成らない難しさを有していると思います。
これを成功に導くことができるかできないかは、制度設計などの枠組み以上に「マンパワー=意識改革」に懸(か)かっているのではないかと思う者の一人です。



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